自己免疫性肝炎とは?

免疫の異常が引き起こす慢性肝炎 指定難病について知る

1. 自己免疫性肝炎とはどんな病気?

自己免疫性肝炎(Autoimmune Hepatitis:AIH)は、本来ウイルスや細菌から体を守るはずの免疫システムが、誤って自分の肝細胞を攻撃し続けることで慢性的な肝炎を引き起こす病気です。

原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的な体質に加え、ウイルス感染・薬剤・ストレスなどの環境因子が引き金になると考えられています。

患者さんの約80〜90%は女性で、30〜50代に多く見られますが、どの年齢でも発症しえます。日本では10万人あたり約15〜20人が罹患するとされており、国の指定難病(医療費助成の対象)に認定されています。

2. 発症のしくみ

免疫の誤作動

自己抗体が肝臓を攻撃
本来ウイルスなどを攻撃する免疫細胞(Tリンパ球)や自己抗体が、肝細胞の表面にある抗原を標的にして慢性的な炎症を起こします。

発症の引き金

遺伝的素因+環境因子
HLA遺伝子型(免疫に関わる遺伝子)の素因に加え、ウイルス感染・薬剤・ストレスなどが組み合わさって発症すると考えられています。

3. 主な症状

自覚症状がほとんどなく健診で発見される方も多い一方、さまざまな症状が現れることもあります。

  • 倦怠感・疲れやすさ(最多)
  • 食欲不振・吐き気
  • 黄疸(白目・皮膚が黄色に)
  • 右わき腹の不快感・重さ
  • 関節痛・発熱(全身症状)
  • 無症状(健診のAST・ALT上昇で発見)
注意

急性発症の場合、短期間で黄疸・腹水・意識障害が現れる「急性肝不全」に進展することがあります。黄疸が出た場合は速やかにご受診ください。

4. 合併しやすい病気

自己免疫性肝炎は、他の自己免疫疾患を合併することが少なくありません。

合併疾患 特徴 頻度・注意点
原発性胆汁性胆管炎(PBC) 胆管に炎症が起こる自己免疫疾患 AIHとの「オーバーラップ症候群」として合併。治療方針が変わります
橋本病(慢性甲状腺炎) 甲状腺への自己免疫反応 AIH患者さんに比較的多く見られます
シェーグレン症候群 口・目の乾燥を主症状とする疾患 口腔乾燥・眼乾燥が合わさることがあります
関節リウマチ 全身の関節に炎症が起こる疾患 総合的な管理が必要です

5. 検査・診断

自己免疫性肝炎の診断は、血液検査・自己抗体・組織検査・治療反応性を総合的に評価して行います。

  • 血液検査(肝機能・免疫)
    AST・ALTの上昇に加え、IgG(免疫グロブリンG)の著明な高値が特徴的です。
  • 自己抗体検査
    抗核抗体(ANA)・抗平滑筋抗体(ASMA)・抗LKM-1抗体などが陽性になります。1型・2型の分類にも使われます。
  • 腹部超音波・CT検査
    肝臓の状態・線維化の程度を確認し、他の疾患との鑑別を行います。
  • 肝硬度測定(エラストグラフィ)
    超音波で肝臓の硬さを測り、線維化の程度を非侵襲的に評価します。
  • 肝生検(組織検査)
    診断確定と重症度評価に重要です。炎症・線維化のパターンで確定診断します。

6. 治療の流れ

段階 治療内容
導入期 プレドニゾロン(ステロイド)を高用量で開始
30〜40mgから投与
漸減・維持期 肝機能改善に合わせて徐々に減量
アザチオプリン併用でステロイド量を節減
経過観察期 少量で長期維持。定期検査で再燃を早期発見
再燃率が高く長期管理が必要
  • ステロイド(プレドニゾロン)
    免疫を抑えて炎症を鎮める主力薬です。通常30〜40mgから開始し、肝機能の改善に合わせて減量していきます。
  • アザチオプリン(免疫抑制薬)
    ステロイドとの併用で副作用を抑えながら効果を維持します。維持療法の中心的な薬です。
  • ステロイドの副作用管理
    骨粗鬆症・血糖上昇・感染リスクに注意が必要です。カルシウム・ビタミンD補充を並行して行うことがあります。
  • 治療中止について
    完全寛解が2年以上続いた場合に中止を検討することもありますが、再燃率が高く(約50〜80%)、多くの場合は長期投与が必要です。

7. 日常生活での注意点

  • 定期的な通院・血液検査を続ける
    症状がなくても再燃していることがあります。定期検査を欠かさないようにしましょう。
  • 薬を自己判断で中止・減量しない
    再燃すると治療が難しくなることがあります。必ず医師の指示に従ってください。
  • アルコールを控える
    肝臓への負担を増やします。治療中は禁酒を強くお勧めします。
  • 感染症の予防
    ステロイド服用中は感染リスクが高まります。手洗い・うがいを徹底し、発熱時は早めに受診を。
  • 骨粗鬆症の予防
    ステロイドの長期服用で骨がもろくなりやすいため、適度な運動・カルシウム摂取・日光浴を心がけましょう。
  • 他の科を受診する際も申告を
    市販薬・漢方・サプリを含め、自己免疫性肝炎の治療中であることを必ず医師に伝えてください。
  • 難病医療費助成制度の活用
    指定難病のため、申請すると治療費の自己負担が軽減されます。ご不明な点はスタッフにご相談ください。

受診のご案内

自己免疫性肝炎は長期にわたる治療が必要な病気ですが、適切に管理すれば多くの方が安定した状態を保てます。倦怠感が続く・健診で肝機能異常を指摘された・他の自己免疫疾患がある方は、お気軽にご相談ください。

竹内内科眼科クリニック
院長
竹内 司(たけうち つかさ)