薬・サプリメントによる肝臓へのダメージについて知る
1. 薬物性肝障害とはどんな病気?
薬物性肝障害(Drug-Induced Liver Injury:DILI)とは、薬・サプリメント・健康食品などの摂取によって肝臓の細胞が傷つき、肝機能が低下する病気です。
肝障害の原因全体の約10〜15%を占めるとされており、決して珍しくない病気です。多くは原因となる薬を中止することで回復しますが、気づかずに服用を続けると重症化し、肝不全に至ることもあるため、早期発見が大切です。
大切なポイント
処方薬だけでなく、市販薬・漢方薬・サプリメント・健康食品でも起こりえます。「自然由来だから安全」とは限りません。服用中のすべての薬・サプリを医師に申告しましょう。
2. 原因となりやすい薬・食品
| 種類 | 代表的な薬・食品 | 注意点 |
|---|---|---|
| 処方薬 | 抗生物質・解熱鎮痛薬(NSAIDs)・抗結核薬・抗真菌薬・抗がん剤・向精神薬など | 定期的な肝機能検査が重要。 自己判断での中止はしないこと |
| 市販薬(OTC) | アセトアミノフェン(解熱鎮痛)・総合感冒薬・胃腸薬など | 過剰摂取・長期使用で起こりえる。 用法・用量を必ず守ること |
| 漢方薬・生薬 | 小柴胡湯・大黄・何首烏など | 自然由来でも肝障害を起こすことがある。 必ず医師に申告を |
| サプリ・健康食品 | ウコン・プロテイン・ダイエットサプリ・脂肪燃焼系サプリなど | 医薬品と同様に肝臓で代謝される。 複数の併用にも注意 |
3. 発症のしくみ(2つのタイプ)
中毒性(予測可能型)
薬の量に依存して起こる
用量が多いほど起こりやすく、誰にでも起こりうるタイプです。アセトアミノフェンの過剰摂取が代表例です。
特異体質性(予測困難型)
体質・免疫による反応
ごく少量でも特定の体質の方に起こります。服薬開始から数日〜数ヶ月後に発症することがあり、事前の予測が難しいタイプです。
4. 主な症状
多くの場合は自覚症状がほとんどなく、血液検査(AST・ALTの上昇)で初めて発見されます。症状が現れる場合は以下のようなものがあります。
- 倦怠感・疲れやすさ
- 食欲不振・吐き気
- 黄疸(皮膚・白目が黄色くなる)
- 右わき腹の重さ・違和感
- 皮膚のかゆみ
- 尿が濃くなる・便が白くなる
注意
黄疸(皮膚・白目の黄染)が現れた場合は重症化のサインです。服用中の薬・サプリをすべてリストアップして、すぐにご受診ください。
5. 検査・診断
薬物性肝障害の診断では「いつ・どの薬を・どのくらいの期間飲んでいたか」の情報が最も重要です。受診の際は処方薬・市販薬・漢方薬・サプリメントをすべてお持ちください。お薬手帳も大変役立ちます。
- 血液検査(肝機能)
AST・ALT・ALP・γ-GTP・ビリルビンで肝障害のパターンと重症度を評価します。 - 服薬歴の詳細確認
最も重要な診断情報です。すべての薬・サプリを医師に申告してください。 - 腹部超音波検査
胆石・胆道疾患・ウイルス性肝炎など他の原因を除外します。 - ウイルス性肝炎の検査
A型・B型・C型肝炎との鑑別のため、抗体・抗原検査を行います。 - 因果関係の評価(RUCAMスコアなど)
薬剤との関連性を客観的に評価する国際的な診断基準を使います。
6. 治療
- 原因薬の中止(最重要)
疑われる薬・サプリをすみやかに中止します。自己判断での中止はせず、必ず医師に相談してください。 - 安静・経過観察
軽症であれば服薬中止だけで自然に回復することがほとんどです。 - 肝庇護療法
グリチルリチン製剤(点滴・内服)などで肝臓の炎症を和らげます。 - ステロイド(免疫性肝障害の場合)
アレルギー性の反応が強い場合に使用されることがあります。 - 重症例・劇症肝炎への対応
肝不全に至った場合は入院・集中治療、状況によっては肝移植の検討が必要です。
7. 日常生活での注意点
- お薬手帳を活用する
処方薬・市販薬・サプリをすべて記録し、受診のたびに医師・薬剤師に見せましょう。 - 過去に薬で肝障害を起こした方
その薬剤名を必ずメモして保管し、他院受診時も必ず申告してください。 - アルコールを控える
アルコールは薬物性肝障害を悪化させます。治療中・回復中は禁酒を。 - サプリ・健康食品は医師に相談を
複数の組み合わせは相互作用で肝臓への負担が増えることがあります。 - 症状が出たらすぐ受診
倦怠感・食欲不振・黄疸・かゆみなどが現れたら、服用中の薬を確認して早めに受診しましょう。

竹内内科眼科クリニック
院長
竹内 司(たけうち つかさ)
- 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・消化器内視鏡指導医
- 日本消化管学会 胃腸科専門医
- 日本肝臓学会 肝臓専門医
