肝細胞がん(肝臓がん)とは?

早期発見が命を守る
原因・検査・治療について知る

1. 肝細胞がんとはどんな病気?

肝細胞がん(Hepatocellular Carcinoma:HCC)は、肝臓を構成する「肝細胞」から発生する悪性腫瘍です。日本では年間約2〜3万人が新たに診断され、がん死亡原因の上位を占める重要な疾患です。

最大の特徴は「慢性肝炎・肝硬変という下地の上に発生すること」と「初期段階では自覚症状がほとんどないこと」の2点です。そのため、肝臓病をお持ちの方には定期的な検査による早期発見が非常に重要です。

重要

肝細胞がんの約80〜90%は、慢性肝炎・肝硬変を背景に発生します。B型・C型肝炎、アルコール性肝疾患、MAFLD(脂肪肝)などの持病をお持ちの方は、定期検査で早期発見を目指すことが最大の予防策です。

2. 主な危険因子(リスクが高い方)

危険因子 詳細 リスクの目安
肝硬変(最大のリスク) 原因を問わず、肝硬変があると肝がんが発生しやすくなります 年間5〜8%の確率で肝がんが発生
B型・C型肝炎 慢性ウイルス性肝炎はそれ自体が発がんリスク C型は治癒後も継続的な検査が必要
MAFLD・MASH(増加中) 肥満・糖尿病を背景とした脂肪肝・脂肪性肝炎 肝硬変がなくても発生することがある
多量飲酒 長期の多量飲酒 → アルコール性肝硬変 → 肝がん 禁酒が最大の予防策

3. 主な症状

早期はほぼ無症状です。症状が現れた時点ではすでに進行していることが多いため、定期検査が何より重要です。

  • 右上腹部の痛み・重さ
  • 体重減少・食欲不振
  • 倦怠感・疲れやすさ
  • 黄疸・腹水(進行時)
  • 発熱(腫瘍壊死・感染)
  • 無症状(早期・定期検査で発見)
緊急サイン

右わき腹の急激な痛みや血圧低下は、腫瘍破裂による腹腔内出血の可能性があります。直ちに救急受診してください。

4. 検査・診断

  • 腫瘍マーカー(AFP・PIVKA-II)
    肝がんを示す物質の上昇を血液検査で確認します。超音波検査と組み合わせて3〜6ヶ月ごとに行うことが推奨されています。
  • 腹部超音波検査
    最も基本的なスクリーニング。腫瘍の位置・大きさ・個数を確認します。痛みなく短時間で受けられます。
  • 造影CT・造影MRI
    肝細胞がんに特有の「早期濃染 → 後期wash out」という造影パターンで診断します。転移の有無も評価します。
  • EOB-MRI(肝特異性造影MRI)
    小さな早期腫瘍の発見に優れた最新の検査です。肝細胞がんの精密診断に広く使われます。
  • 肝機能評価(Child-Pugh分類・ALBI score)
    治療法の選択に肝予備能の評価が不可欠です。
  • 肝生検
    画像だけで診断が難しい場合に、腫瘍から組織を採取して確定診断します。

5. 病期(ステージ)

肝細胞がんのステージは、腫瘍の大きさ・個数・血管侵襲・転移の有無を組み合わせて決まります。

日本肝癌研究会編.臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第6版補訂版.2019年,金原出版,P26-27.より作成

6. 治療法

ステージ・肝機能・腫瘍の位置・患者さんの状態に応じて、最適な治療法を選択します。複数の治療を組み合わせることもあります。

分類 治療法 内容・対象
根治的治療 外科切除 腫瘍を含む肝臓の一部を切除。
早期がんで肝機能が十分な場合の第一選択
根治的治療 肝移植 ミラノ基準(5cm以下1個、または3cm以下3個以内)を満たす早期がん+肝硬変が対象。
がんと肝硬変の両方を治せる
根治的治療 ラジオ波焼灼療法(RFA) 針を刺して高周波で腫瘍を焼く低侵襲治療。
3cm以下の早期がんに有効
局所治療 肝動脈化学塞栓療法(TACE) カテーテルで抗がん剤を注入し腫瘍への血流を遮断。
中等度進行がんに有効
全身治療 分子標的薬・免疫療法 ソラフェニブ・レンバチニブ・アテゾリズマブ+ベバシズマブなど。
進行・転移がんに使用。近年大きく進歩している

7. 治療後の経過観察(サーベイランス)

肝細胞がんは治療後の再発率が高い(5年で約70〜80%)ため、治療が成功した後も継続的な監視が不可欠です。

時期 検査間隔 検査内容
治療後1〜2年 1〜2ヶ月ごと CT・MRI・超音波・腫瘍マーカーを組み合わせて密に観察
治療後3〜5年 3〜4ヶ月ごと 画像検査・血液検査を継続
治療後5年以降 6ヶ月ごと 肝炎・肝硬変が続く限り、生涯にわたる定期検査が重要

8. 日常生活での注意点

  • 定期受診・検査を欠かさない
    症状がなくても必ず受診しましょう。定期検査が最大の再発早期発見策です。
  • アルコールは禁酒
    肝臓に直接ダメージを与え、再発リスクを高めます。
  • B型・C型肝炎の抗ウイルス治療を継続
    ウイルスのコントロールが再発予防に直結します。
  • MAFLD・糖尿病・肥満の管理
    体重管理・血糖管理が再発予防にも重要です。
  • 市販薬・サプリは医師に相談を
    肝臓に負担をかける可能性があります。必ず相談してから使用してください。
  • 精神的なサポートも大切に
    不安やつらさを感じたら、スタッフや担当医にいつでもご相談ください。

受診のご案内

肝細胞がんは、早期発見できれば根治が十分に目指せる病気です。肝炎・肝硬変・脂肪肝などの持病をお持ちの方は、定期的な超音波検査と腫瘍マーカー検査を続けることが何より大切です。「検診で肝臓に影がある」「腫瘍マーカーが上がっている」と言われた方は、早めにご相談ください。

竹内内科眼科クリニック
院長
竹内 司(たけうち つかさ)