肝硬変とは?

肝臓が硬くなるとはどういうことか
原因・症状・治療を知る

1. 肝硬変とはどんな状態?

肝臓は本来、再生能力の高い臓器ですが、慢性的な炎症が長年続くと、傷ついた細胞の代わりに「線維(コラーゲン)」が増殖します。この線維化が肝臓全体に広がり、小さな塊(再生結節)が無数にできた状態が「肝硬変」です。

肝硬変になると、肝臓が本来もつ「解毒」「タンパク合成」「胆汁産生」などの機能が著しく低下します。また、肝臓内の血流が滞ることで「門脈圧亢進症」が起こり、さまざまな合併症の引き金となります。

日本の肝硬変患者数は約40〜50万人と推計されています。かつてはC型肝炎が最多の原因でしたが、現在はC型肝炎の治療が進歩したため、アルコール性・MAFLD(脂肪肝関連)が増加しています。

2. 主な原因

原因 詳細 ポイント
MAFLD・アルコール性(増加中) 肥満・糖尿病・飲酒が原因の脂肪肝(MASH)からの進行 近年最も増加している原因。生活習慣の改善が最重要
B型・C型肝炎ウイルス 長期の慢性肝炎から進行 C型肝炎は現在ほぼ治癒できるが、肝硬変後も肝がんリスクは残る
自己免疫性肝炎・PBC AIH・原発性胆汁性胆管炎が未治療・治療不十分な場合 早期診断・適切な治療でほとんどの場合進行を防げる
その他 薬剤性・ウィルソン病・ヘモクロマトーシスなど代謝異常 原因に応じた専門的な治療が必要

3. 代償性と非代償性:2つのステージ

代償性肝硬変(早期・安定期)

肝臓がまだ機能を保っている状態
自覚症状が乏しく、血液検査・画像検査で発見されることが多い。適切な管理で長期間この状態を保てます。

非代償性肝硬変(進行期・症状あり)

肝機能が限界を超えた状態
腹水・黄疸・肝性脳症・食道静脈瘤破裂などの合併症が出現。入院治療が必要になることが多い。

代償性のうちに原因疾患を治療し、生活習慣を整えることが最大の目標です。

4. 主な症状・合併症

代償性の時期は無症状が多いですが、進行すると以下のような症状・合併症が現れます。

合併症 原因・しくみ 対応
腹水 門脈圧上昇+アルブミン低下でお腹に水がたまる 利尿薬・低塩食・腹水穿刺
食道・胃静脈瘤 門脈圧亢進で血管が怒張。破裂すると大量出血し命に関わる 内視鏡的治療・β遮断薬で予防
肝性脳症 アンモニアが解毒されず脳に影響。ぼんやり・意識障害が起こる ラクツロース・リファキシミン・分岐鎖アミノ酸
黄疸 ビリルビン処理能力の低下で皮膚・白目が黄色くなる 原因治療・対症療法
筋肉量の低下(サルコペニア) 栄養代謝障害で筋肉が減少し、歩行・体力が低下 タンパク摂取・運動・BCAA補充
肝細胞がん 肝硬変は肝がん発生の最大リスク。年間5〜8%の確率で発生 3〜6ヶ月ごとの超音波+腫瘍マーカー検査
緊急サイン

黒い便(タール便)・吐血・急激な意識障害・高熱+腹痛が現れた場合は、食道静脈瘤破裂・肝性脳症・腹膜炎の可能性があります。すぐに救急受診してください。

5. 検査・診断

  • 血液検査(肝機能・合成能)
    AST・ALT・アルブミン・PT(プロトロンビン時間)・血小板数・ビリルビン・アンモニアなどを総合的に評価します。
  • 腹部超音波検査
    肝臓の形・エコー輝度・脾臓の腫大・腹水の有無を確認します。肝がんスクリーニングにも重要です。
  • CT・MRI検査
    肝臓の形態・血流・腫瘤の詳細な評価を行います。
  • 肝硬度測定(エラストグラフィ)
    超音波で肝臓の硬さを測定し、線維化・肝硬変の程度を評価します。
  • 上部消化管内視鏡
    食道・胃静脈瘤の有無・程度・出血リスクを直接確認します。定期的な検査が推奨されます。
  • AFP・PIVKA-II(腫瘍マーカー)
    肝がんスクリーニングの血液検査です。超音波と組み合わせて定期的に行います。

6. 治療の3本柱

① 原因を治す
  • C型肝炎→DAA(直接作用型抗ウイルス薬)
  • B型肝炎→核酸アナログ製剤
  • アルコール→断酒
  • MAFLD→減量・生活改善
  • AIH→ステロイド
  • PBC→UDCA
② 合併症を管理する
  • 腹水→利尿薬・低塩食
  • 食道静脈瘤→内視鏡治療・β遮断薬
  • 肝性脳症→ラクツロース・リファキシミン
  • 肝がん→画像監視・早期治療
③ 肝機能・栄養を守る
  • 分岐鎖アミノ酸(BCAA)補充
  • 亜鉛補充
  • 就寝前補食(LES)
  • 肝庇護薬
肝移植

内科的治療で管理できない末期肝不全・難治性合併症・早期肝がんでは肝移植が検討されます。生体肝移植・脳死肝移植の両方が行われています。

7. 食事・日常生活の注意点

  • 禁酒は絶対条件
    アルコールは肝臓の線維化を直接促進します。原因がアルコール以外でも、飲酒は厳禁です。
  • 塩分を控える(腹水がある方)
    1日6g未満が目標です。加工食品・漬物・外食の塩分に特に注意しましょう。
  • タンパク質をしっかり摂る
    筋肉量の維持に重要です。ただし肝性脳症がある場合はタンパク量を医師と相談してください。
  • 就寝前の補食(LES)
    夜間の空腹は肝臓への負担になります。就寝前に100〜200kcal程度の軽食(おにぎり・クラッカーなど)をとることが推奨されます。
  • 市販薬・サプリに注意
    肝臓で代謝されるため過剰摂取に注意。使用前に必ず医師・薬剤師に相談してください。
  • 定期的な受診・検査を続ける
    肝がんは3〜6ヶ月ごとの超音波+腫瘍マーカー検査で早期発見が可能です。静脈瘤の定期内視鏡も重要です。

受診のご案内

肝硬変と診断されても、あきらめる必要はありません。原因疾患の治療・禁酒・適切な食事管理・定期的な検査を続けることで、代償性の状態を長く保つことができます。体のだるさ・むくみ・お腹の張りが気になる方、健診で肝機能や血小板の異常を指摘された方は、ぜひ早めにご相談ください。

竹内内科眼科クリニック
院長
竹内 司(たけうち つかさ)