免疫の異常で胆管が傷つく病気
指定難病について知る
1. 原発性胆汁性胆管炎とはどんな病気?
原発性胆汁性胆管炎(Primary Biliary Cholangitis:PBC)は、肝臓の中にある細い胆管(肝内胆管)が免疫の異常によって慢性的に傷つき、胆汁の流れが悪くなる病気です。
胆汁が正常に流れなくなることで肝臓にダメージが蓄積し、長期間放置すると肝硬変へと進行することがあります。しかし早期に発見して治療を始めることで、多くの方が病気の進行を抑えながら普通の生活を続けることができます。
患者さんの約90〜95%は女性で、特に40〜60代に多く見られます。日本の患者数は約3万人以上と推計されており、国の指定難病(医療費助成の対象)に認定されています。近年は健診の普及により、無症状のうちに発見される方が増えています。
2. なぜ起こるのか(発症のしくみ)
免疫が胆管を攻撃する
自分の胆管を異物と誤認
本来は外敵を守るはずの免疫細胞が、肝内の小葉間胆管を攻撃し続けることで慢性炎症が起こります。なぜそうなるかは完全には解明されていません。
胆汁うっ滞が肝臓を傷める
胆汁が滞り線維化が進む
胆管が壊れると胆汁が肝臓内にたまり(胆汁うっ滞)、その毒性で肝細胞が傷つきます。これが長年続くと線維化・肝硬変へと進行します。
3. 主な症状
初期はほとんど無症状で経過することが多く、健診の血液検査(ALPやγ-GTPの上昇)で偶然発見されるケースが増えています。症状が出る場合は以下のようなものがあります。
- 皮膚のかゆみ(最も特徴的)
- 倦怠感・疲れやすさ
- 黄疸(進行すると出現)
- 右上腹部の不快感・重さ
- 口・目の乾燥(合併症)
- 骨がもろくなる(骨粗鬆症)
皮膚のかゆみはPBCに最も特徴的な症状で、胆汁成分が皮膚に沈着して起こります。夜間や入浴後に悪化することが多く、日常生活に支障をきたすこともあります。
4. 合併しやすい病気
PBCは他の自己免疫疾患を合併することが少なくありません。
| 合併疾患 | 主な症状 | 注意点 |
|---|---|---|
| シェーグレン症候群(最多) | 口・目の乾燥 | PBC患者の約30〜40%に合併します |
| 自己免疫性肝炎(AIH) | PBCとAIHが重複して発症 | オーバーラップ症候群と呼ばれ、治療方針が異なります |
| 橋本病・甲状腺機能低下症 | 倦怠感・むくみ・体重増加 | 甲状腺ホルモン検査も定期的に行います |
| 関節リウマチ | 関節の痛み・腫れ | 総合的な自己免疫疾患の管理が必要です |
5. 病気のステージ(進み方)
| ステージ | 状態 | 説明 |
|---|---|---|
| Stage 1 | 胆管炎のみ(門脈域限局) | 炎症が門脈域の胆管に限られている段階。この段階で発見・治療開始するのが理想です。 |
| Stage 2 | 炎症が広がる(門脈周囲炎) | 炎症が門脈周囲に広がってきた段階。治療によって進行を抑えることができます。 |
| Stage 3 | 線維化が進む(架橋線維化) | 肝臓の線維化が進んだ状態。進行を遅らせることが治療目標となります。 |
| Stage 4 | 肝硬変 | 肝臓が広範囲に硬化。腹水・黄疸などの合併症が現れることがあります。 |
治療を早期に開始するほどステージの進行を遅らせることができます。多くの方はStage1〜2で発見され、治療により安定した状態を保てます。
6. 検査・診断
- 血液検査(胆道系酵素)
ALP・γ-GTP・総ビリルビンの上昇が特徴的です。AST・ALTは初期には軽度にとどまることが多いです。 - 抗ミトコンドリア抗体(AMA)
PBCに非常に特異的な自己抗体で、患者さんの約90〜95%で陽性になります。診断の決め手となる最も重要な検査です。 - 腹部超音波・CT検査
胆管拡張・胆石・肝臓の状態を確認し、他の胆道疾患との鑑別を行います。 - 肝硬度測定(エラストグラフィ)
超音波で肝臓の硬さを測り、線維化の程度を非侵襲的に評価します。 - 骨密度検査・脂溶性ビタミン測定
骨粗鬆症やビタミンD・A・K・Eの欠乏を評価します。 - 肝生検(組織検査)
診断が不確かな場合やAIHとのオーバーラップが疑われる場合に行います。
7. 治療
PBCの治療は、病気の進行を遅らせ、症状を和らげ、合併症を予防することが目標です。
- ウルソデオキシコール酸(UDCA)
PBCの第一選択薬です。胆汁の流れを改善し、炎症を抑えます。多くの患者さんで肝機能の改善と進行抑制が期待できます。長期服用が基本です。 - オベチコール酸(OCA)
UDCAの効果が不十分な場合に追加する薬です。FXR受容体に作用し、胆汁うっ滞を改善します。 - ベザフィブラート
UDCAと組み合わせることで効果を高めることが示されています。 - かゆみの治療
コレスチラミン・リファンピシン・ナルトレキソンなどを症状に応じて使います。 - 骨粗鬆症の予防・治療
カルシウム・ビタミンD補充、ビスホスホネート製剤などを使います。 - 肝移植
末期肝不全・難治性のかゆみなどで内科的治療が限界の場合に検討します。移植後の成績は良好です。
8. 日常生活での注意点
- 定期的な通院・血液検査を続ける
症状がなくても肝機能は変動することがあります。定期検査を欠かさないようにしましょう。 - 薬(UDCAなど)を自己判断で中止しない
継続服用が病気の進行を抑える最大の手段です。 - 骨粗鬆症予防
カルシウムを多く含む食品(乳製品・小魚)を積極的に摂り、適度な日光浴と体操を習慣にしましょう。 - アルコールを控える
肝臓への負担を増やします。禁酒または節酒を強くお勧めします。 - 市販薬・漢方・サプリは医師に相談を
肝臓や胆道に影響することがあります。使用前に必ずご確認ください。 - 他の科を受診する際も申告を
PBCの治療中であること・内服薬を必ず担当医に伝えてください。 - 難病医療費助成制度の活用
指定難病のため、申請すると治療費の自己負担が軽減されます。詳しくはスタッフにご相談ください。

- 日本内科学会 総合内科専門医・認定内科医
- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・消化器内視鏡指導医
- 日本消化管学会 胃腸科専門医
- 日本肝臓学会 肝臓専門医
